ストライプ


蜜柑を剥いたときの白い筋みたいに浮かび上がって残った気持ちが、いまでも舌の上をざらつかせている。満月の日には地下鉄の中イヤホンから流れるメッセージに涙を流した。いつもらったかも最早わからなくなっている手紙を読んで、自分はいまここにいる自分だけではなくて、ひとの記憶の中の自分で成り立っているものなのだという一つの事実に気が付く。この気持ちには名前はつかないけれど、それでもこの気持ちの持ち主は自分で、この気持ちを懐き続ける限り、わたしは存在しているのだという二つ目の事実にハッとして、芋掘り式にいくつもの事実を収穫して気怠い午後を溶かす。

Let there be light: and there was light.

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