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Let there be light: and there was light.

2021.09.25 09:24

ストライプ

蜜柑を剥いたときの白い筋みたいに浮かび上がって残った気持ちが、いまでも舌の上をざらつかせている。満月の日には地下鉄の中イヤホンから流れるメッセージに涙を流した。いつもらったかも最早わからなくなっている手紙を読んで、自分はいまここにいる自分だけではなくて、ひとの記憶の中の自分で成り立っているものなのだという一つの事実に気が付く。この気持ちには名前はつかないけれ...
2021.09.22 13:32

壊れかけのiPod nano

受験勉強さえ乗り越えれば安定した老後が手に入ると思っていた。受験勉強さえ乗り越えれば可愛いおばあちゃんになれると思っていた。溺れそうなくらいの息継ぎをして、胃がきりきりするくらい合格率とにらめっこをした日々が、吐きそうになりながら単語帳片手に電車に揺られた制服の日々が、大学を中退し、精神障害者になったいまはなかったことになっている。こんな生き方しかできない。...
2021.08.19 11:09

猫にあの世はあるのか

泣きたいとき、「救い」があるのかと思ったら、そう思った過去ができてそれっぽくなる。救いはある。飼い猫(イマジナリーキャット)にも死が訪れるときが来るだろう。イマジナリーキャットの亡骸は空気だけれど、温度はそこに残っているかもしれない。「猫にあの世はあるのだろうか」と。時代を遡ってみると、紙や文字が生まれたのもきっと人々が救いをもとめたから。神がいるなら、涅槃...
2021.05.31 07:35

2016年の桜

大学二年の春、桜の花が咲くプロムナードを歩いていた。にわか雨が降っている。差している透明なビニール傘の向こう側から濡れた花びらがひらひら降ってきて、ビニールに張り付いた。そのとき素直に花びらは自ら選んでわたしのところに来たのだと、安易にも思った。「ソメイヨシノは全部クローンなんだよ」一年後、お花見に行った公園で友人が言った。その春は、その言葉を何回も反芻した...
2021.05.25 12:06
かなしくて、遣る瀬ないことが起きてもただ、生きていくほかはないのだと。自分の人生に悔いはないと向かった過去のベランダに、今なら椅子を置ける。
2021.04.26 12:10

息つぎ

雪の季節が嘘だったかの様にアスファルトがむき出しになっている道路。すこし削れたところを見つけると、(あぁ、ここにかつて除雪機が。)とかろうじて思う。住宅街の花壇にはチューリップがしゃんとしていて、本当に季節だけは巡っている。何の思い入れもない桜が咲いて、わたしは代わり映えのない生活がつづく。溶けかけのチョコレートのやわらかい咀嚼のような、つつがない日々を甘受...
2020.11.21 11:48

November 21

2020.11.05 08:40

5/11/2020

2020.09.25 13:06

冬の回想

涙の理由はいつだって目に見えないものなのに、どうしてこんなに大きくて、私の後ろをついてくるのだろう。薄氷の上を歩くみたいにいつでもヒリヒリと生きてきた。一度、氷が破れて冷たい水の中へ落ちると、どうしてこんな所に来てしまったのだろうと思う。しかし、氷の上を歩こうと思ったのも自分で、取り返そうとしてもどうしようもないのだと思い込むしかないのだ。冬の空気は、唯一触...
2020.09.07 10:08

ロケットと手紙

だれかに手紙を書くようなことって今では片道切符だけ手にしてどこか、遠いところへ行くようなことと殆ど同じなんだろうな。戻ってこない、戻って来るかは誰にもわからないし、そんなのわかっていたらわざわざ手紙など出さないだろう。文字通り視界がひらけるようなところで自分の気持ちをはっきりさせたい。思い出した分だけ、その思い出したという事実に輪郭が帯びてくる。弧を描いてじ...
2020.07.07 10:34

わかりあえない

iPhoneのiOSとAndroidのそれと同じくらい他人と理解する幅が違うし、その人の言語の段階がどれくらいラフなのかにも依るところもある。台湾のロープウェイに乗って辿り着く、茶の産地の喫茶店でその店の人となんとなく意思疎通して通じたり通じなかったりして、やっと飲んだお茶が美味しかったことをたまに思い出す。humidな気候がアジアなのだと、そのアジアのなか...
2020.03.22 08:55

朝が来ることよりもご飯が炊けることの方がうれしかったころには気がつかなかったこと

どんなことをして どんな気持ちになったとしても朝というのはひとしく、やってくるもの。つらい夜を乗り越えてくる朝もあるけれど、そういう夜がどんなものだったかはもう忘れてしまった。明け方に近所を散歩していて、魚の焼けるにおいがして朝の到来を知った日もあった。だけれど、朝をあきらめない人になるというのが、わたしの原点だ。

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